胸腺で免疫細胞として仕上げられたT細胞の中にあるPD-1という装置は、相手が壊して良い対象なのか、壊してはいけない自分の細胞なのかを、見分ける働きをしているそうですが、癌の中にはお目こぼしをしてもらうための、<通行手形>のようなものを、その装置にはめ込んで、のうのう・ぬくぬくと育って悪さをするものがあるようです。
こんどノーベル医学生理学賞を受賞することになった、京都大学の本庶教授は、その癌の<通行手形>を何とかして使えなくする方法はないかと、研究・奔走して、とうとうオプシーボという癌の特効薬を開発したのだそうです。これによって、これまで治せなかった癌患者の多くが、救われるようになったのだそうです。本当に、素晴らしいことです、
ただ、その通行手形を使えなくするということは、他の壊してはいけない組織・細胞までも、攻撃されてしまう恐れが強くなることですので、自己免疫疾患になる可能性も高まってしまいます。
このような、あちらを立てればこちらが立たずというようなジレンマは、人工的な働きかけだから起こることで、生きている有機的な生命体においては、それは何らかの形で解決されてきているはずです。つまり、癌の退治も、自己免疫の防止も、両立するような解決方法があるはずだと思います。
そうでなければ、この世は、癌患者と自己面得k病患者であふれかえっているはずです。それに関連して、私にはちょっとした体験があります。
舌癌の患者さんが、リンパ節転移して喉がコリコリ腫れていました。私は、舌癌の方はもう長いので、すぐには取れないが、転移したばかりのリンパ節の方ならば何とかできるはずだと、胸腺と交感神経幹を中心に、そのための治療を施しました。その後、一旦腫れがひどくなったので、医者からはとひどくなっている、と云われたそうです。ところが、その後に、私のところに来た時は、驚いたことに、ノドの腫れがすっかり取れていた、身体全体の異常感もなくなって、とても素直な感じになっていました。
これで私は、胸腺を中心として交感神経幹を整える治療に自信を持ったのですが、残念なことに、治療を続行させてもらえませんでした。結局、なくなる最後まで触らせてもらえませんでした(合掌)いずれにしろ、T細胞にPD-1の装置を取り付けて使えるようにする胸腺と、その胸腺を統括する交感神経幹を整えることが、癌の治療にもとても大事だと思っています。