目に余るねつ造の山、副交感神経の本当の正体

2018/02/24
富士山

 癒しの神経、休息の神経、修復の神経、推認の神経、風呂の温度40度以下で働く神経、リンパ球系免疫細胞を統括する神経等々、交感神経と副交感神経は拮抗的に働いているという誤った公式のおかげで、事実を確かめもしないで、公式を当てはめただけの想像・ねつ造が、テレビや雑誌・インターネット上をにぎわしています。

 このように、真実からかけ離れた誤った規定がどんどん独り歩きを始めると、人類に害を及ぼすようになってしまいますので、ここに、副交感神経の真実の姿を明らかにして、その暴走に少しでも歯止めをかけたいと思います。

 まず、端的に云って、副交感神経とは、魚類の時代に骨格筋を動かすために生まれた運動神経と、ワンセットで生まれた胃腸の腸管を動かすための神経です。ですから、全副交感神経の70パーセントもの大部分は、その腸管に分布しています。ですから手足や皮膚には全く分布しておりません。これでどうして、風呂の温度40度以下で働く神経となるのでしょうか?全く事実を見ていないということです。

 よく言われるのは心臓に対して、交感神経と副交感神経とが反対の作用をしていることです。たしかにそのように見える事実はあります。しかし、その両者の心臓に対する関わり方は、全く違うのです。副交感神経は、腸管の運動の方がメインで、心臓を抑制するのは、それに伴っての副次的な働きなのです。

 これに対して、交感神経の方は、本来のメインのはたらきとして心臓に関わっているのです。魚類の時代、交感神経は、心臓の働きを活発にするノルアドレナリンというホルモンを分泌する副腎髄質の前駆体でした。つまり、まだ神経ではなく内分泌腺だったのです。それも、心臓を動かすことを専門とする器官として、通常の心臓の状態を維持するために関わっていたのです。その時の、魚にとって通常というのは、運動モードを維持することでした。

 しかし、哺乳類になると環境が激変し通常の状態が多様性を帯びてきて、それに合わせて心臓のみならず循環系全体を微妙に調節するシステムが必要になって、<交感神経ー副腎系>が造られたのです。

 これに対して、腸管運動神経である副交感神経は、相変わらずの例外的に心臓を抑制するだけで他の循環系にはかかわっていないままなのです。それは副交感神経が腸管の運動にだけ関わる神経だからに他なりません。