広尾の天寿堂の診療雑感、不思議な共鳴が治療のツボを教えてくれる

2017/11/18
共鳴

 長年治療をしていると、時として治療中に、何の前触れもなく自分の身体の思わぬところが、不思議な異常感に見舞われることがあります。ところが、じつはその部位が治療している患者さんの大事な治療点を指し示している場合が、じつに多いことを実感している今日この頃です。

 たとえば、左足の小指を治療しているときに、やけに硬いなと思った矢先に、自分の顔の左眉の付け根のあたりにジリジリと変な違和感をかんじました。もう何度も経験していたので、すぐにこれは左の眉をやれということだなと思って、左足の小指の治療を中断して、その違和感の出ている眉の付け根を治療したところ、最初に確認しておいた骨盤の左側面の圧痛が消え、足の小指もほぐれていました。後で考えてみますと、この小指と顔の眉の付け根とは、同じ太陽膀胱軽という経絡でつながっていますので、このような反応が起きることは納得できます。

 また、別の例を見てみますと、ある方の背中をやっている時に、突然自分の左胸が苦しくなりました。その時の背中の状態は、むしろ背骨の右側の方が硬く張っていて、右側の方が悪いなと思っていたのですが、自分の身体の共鳴は、左の心臓が悪いと訴えているようでしたので、自分の思いを抑えて、左側の心臓の裏が悪いとして治療しました。

 しかし、心臓が悪いときには必ずと言ってよいほど、左手の小指か中指に反応が出ているものなのですが、そうした異常を感じませんでしたので、じつは半信半疑でした。しかし、一定の処置を終えて、いざ背中を圧してみると、心臓の裏にガチとお堅いものがありました。そこではじめて、こんなに悪かったのかと思い知り、だいぶ無理したようですね、と患者さんに問いかけると、患者さんの方は、我が意を得たりとばかりに、じつはそうなのですよ!ここ二週間ほど大変だったのですが、背中が固まっていくのが分かっていました、という回答が返ってきました。

 やはり、そうだったのだ。共鳴ってすごいな、と改めて実感した次第です。