よく聞く自律神経失調症って、本当は何なの?

2017/10/05
はかり

 病院でいろいろ検査されて明確な原因が分からない時に、自律神経失調症ということが云われることがあります。そのように自律神経失調症は便利な使われ方をしますが、元々の意味は、交感神経と副交感神経という二つの自律神経のバランスが崩れて様々な体の不具合が生じることをいうようです。具体的な症状としては、動悸や息切れ、立ちくらみ・めまい、顔の火照りや手足の冷え、不眠などなどが挙げられています。

 じつは、上に挙げた自律神経失調症の主な症状のほとんどが、交感神経の異常によるものです。たとえば、立ちくらみは、交感神経の循環の統括が悪いために起きる現象です。動悸や息切れ・顔の火照りや手足の冷えも、交感神経の異常です。不眠も、交感神経の昼・夜のスイッチの切り替えがうまくいっていないためのものです。

 では、このような交感神経の異常は、副交感神経とのバランスの崩れによってもたらされたものでしょうか?信じられないかもしれませんが、この交感神経の異常には、副交感神経は全く関与しておりません。ですから、自律神経失調症という命名は、じつはその内実を表すものではなく人間がその思い込みから勝手に想像したものに過ぎないのです。つまり、はっきり言って、嘘だということです。

 ならば、交感神経がどうして異常化してしまうのか?交感神経という名前のとおり、感情とのかかわりで交感神経が異常化する場合がほとんどです。たとえば、動悸なども感情からもたらされるストレスによって動悸が起こります。またストレスは、交感神経に大きな影響を与えて、その交感神経がスジのネットワークの粘着性を高めて、神経と癒着して痛みやシビレをもたらします。さらに言えば、感情のままに夜も寝ないで遊びまわって睡眠不足が続くと、交感神経が弱って循環がうまく統括できなくなって立ちくらみが起きる、というようにです。

 このように交感神経の異常は、副交感神経との関係が失調してなるのではないのです。そもそも副交感神経は、腸管の筋肉の運動を統括するために生まれたものですので、この図にあるような安息・休息・リラックスのための神経ではありません。心臓の運動を抑えるのでそのように見えるのですが、何のために心臓の運動を抑えるのかと言えば、休息のために落とすのではなく、腸管の運動に合わせているだけなのです。休息のためというのは、副交感神経は交感神経とワンセットで反対の働きをしているという誤った規定による思い込みによって、人間が勝手に誤った解釈した結果なのです。

 しかし、この図を見ても分かるように自律神経失調症は、全部交感神経の異常なのです。そういう意味では、熱中症も花粉症も皆交感神経の異常ですから、自律神経失調症としなければならないはずですが、さすがにそれはないようです。

 問題は、その交感神経の異常をどうやって治すのか、ということですが、実際の治療は、効果がないものは淘汰されていきますので、心を整える等々、当らずとも遠からずになっているようです。現代医学の自律神経説から言えば、副交感神経を積極的に優位にする方策があってしかるべきですが、それはありません。

 せいぜいのところ、「自律神経失調症の原因はストレスからくる筋肉の緊張。筋肉をほぐして緊張をやわらげれば回復モード(副交感神経)に切りかわるので、体の回復が促進されていろいろな症状も回復へと向かっていくのです。」というのがせいいっぱいのところです。

 しかし、筋肉の緊張がほぐれるのがどうして副交感神経が働くことになるのか?しかし、骨格筋の筋肉には副交感神経は分布していないので、これはありえないことです。回復モード=副交感神経というのも間違いです。筋肉が疲れすぎてたとき、熱を出してそれを回復させるのはじつは交感神経の働きなのです。

 NHKBS1の「幻の山カカボラジ全記録」の中で、荷物を担ぐポーターたちのマカロンという疲労回復法が、お湯を入れた熱い缶で皮膚を擦るというものでした。これは相当痛く皮膚が真っ赤になりますが、とてもよく効くそうです。これは、交感神経の異常を見事に整えて筋肉の披露を回復させる素晴らしい方法です。このことは、回復モードも、じつは交感神経が担っているものであることを示していると思います。