命を守る腎のネットワークと<交感神経ー副腎系>との関係

2018/01/08
腎

 NHKスペシャル人体が紹介してくれた新事実は、じつは漢方が二千年前から説いている説の正しさを証明してくれるものだということを、前の記事で述べておきました。今回は、さらに、医学を本物の医学にしようと取り組んでいるグループが、論理としてすでに10年以上前に提出していた論理を、今回の番組が、事実的に証明するものであることについて見て、説いてみたいと思います。

 それは、今でも腎臓を「排泄機関」として位置づけるのが現代医学の常識ですが、それは結果的現象論で、腎臓が、生命の維持にとって本質的に果たしている役割とは、血液を生命活動が可能な状態に整えることであると、そのグループは10年以上前にはっきりと規定していました。この規定は、仮説でもなんでもなく、事実でもって科学的に証明された真理として、本にも著されて公にされた立派な学説です。ところが、現代医学はずっと無視してきました。それが、今回自ら発見した新事実でそのことを認めざるを得なくなった、というのが真相だと思います。

 そのグループが、交感神経と副交感神経とについて、生まれた時代が異なり一対でないことを指摘し、現代医学は真実に合わせて内容を書き改める必要がある、と問題提起しています。しかもそれによると、二百年も前にキャノンという生理学者が<交感神経ー副腎系>が様々な危機に際して恒常性を維持して命を守っている様子を実験的に解き明かしています。私はこれを見て、この見方にしたがって経験を見直してみますと、本当の姿が良く見えるようになったので、それをずっとブログに書き続けてきたわけです。

 この番組の中で紹介された、腎臓を司令塔とする命を守るシステムは、臓器レベル・細胞レベルの働き方の様子を具体的に明らかにしてくれたものですが、忘れてならないのは、さらにそれを統括する司令塔が存在することです。それが<交感神経ー副腎系>なのです。ですからその統括の内容を見てみますと、同じなのです。これはどういうことかといいますと、<交感神経ー副腎系>の恒常性の維持の実際の実行部隊が、腎臓を中心とする臓器ネットワークだということです。だから、同じなのです。

 そうなると、一つの疑問が生じます。番組の後半に出てきた何をやっても下がらなかった重症の高血圧患者が腎臓の手術をして血圧を下げたという画期的な成果を上げたことに関してです。それはどういう手術かと言いますと、交感神経を焼き切るというものでした。確かにそれによって何をやっても下がらなかった血圧が劇的に下がったようです。

 しかし、それで本当に良いのかという疑問がどうしても残ります。まずそれを論じる前に確認しておきたいことは、この手術の物語ることは、交感神経が腎臓を統括していることです。そして、交感神経も腎臓も命を守るというより多面的で複雑な統括をしているのに、簡単にそれを焼き切ってしまって良いのか?という疑問です。高地トレーニングで高地に適応した体に変化したのにも交感神経が深くかかわっているはずです。

 現代医学の交感神経の捉え方は副交感神経との関係において血圧を上げるという一面だけしか見ていないので、こういうことが可能となるのだと思いますが、そんな単純なものではないと思います。血圧が下がったと喜んでばかりいないで、何か問題が発生しないか注意深く見守る必要はあると思います。