天珠医学が説くめまいの頭眩と目眩の中身の違い

2017/09/13
くるくる

 昔から、めまいには頭眩(頭暈)と目眩があるということはよく言われますが、その中身の違いについて、明確に説明したものは、私の知る限り、残念ながら見あたらないようです。そこで症例を基にその明確化にチャレンジしてみようと思います。なお、よくめまいと混同されるものに立ちくらみがありますが、これは、全身の循環を統括する交感神経が弱って、立つという動作に合わせての循環の統括がおろそかになった結果として、脳の血流の一時的かつ急激な低下によるものですので、めまいとは区別する必要があります。

 まず頭眩と目眩のもっとも簡単な見分け方は、目をあけているかどうかによって区別できます。つまり、目をあけたままグルグル回るものを目眩と言い、目を閉じた状態でおきるものを頭眩と言います。この場合、目眩は目を閉じても変わりませんが、頭眩は目をあけるとおさまる傾向があります。それが何故かは後でゆっくり説明します。

 先ずはズバリ、頭眩と目眩の中身の違いを指摘しておきましょう。この両者の中身の違いとは、頭眩のめまいの方は、小脳の異常からくるめまいですが、目眩のめまいの方は、耳の三半規管の異常からくるめまいである、という違いがあります。このうち頭眩はきわめてまれで、めまいの大半は、三半規管からくる目眩のめまいだるということがいえます。

 私は、その珍しい頭眩のめまいを二例治したことがありますので、それを紹介しましょう。一例目は交通事故によって後頭部が障害を受けてそこからめまいが生じるようになった症例で、後頭部のスジのネットワークの異常を鍼で治すことによって、めまいが治まっていきました。小脳は後頭部にあるので、このような症状が出てきたのだと思います。

 二例目は、寝ていて寝返りをうったときに目をつぶった状態でグルグルときためまいですが、この型は、もともと頭が非常に凝っていて頭に汗をかく人で、その後頭部から背骨の深いところにピーンと張った異常に硬いスジができていて、左足の小指が異常に硬く反応が強く現れていました。足の小指と後頭部は、太陽膀胱系という経絡のスジのネットワークで直接つながっていますので、このような症状になったのだと思います。これをほぐしてやりますと、めまいは起こらなくなりました。このケースは鍼を使わないでも治すことができました。

 では先に予告しておいた宿題の、何故、目眩の場合は目を閉じてもめまいは変わらないのに、頭眩は目をあけるとめまいは治まる傾向を示すのか、という問題ですが、目眩の場合は、外から情報を入れる目・耳・鼻と一体となった感覚器系の異常によるものですので、耳の異常なのに目が回り、かつ目を閉じても耳の異常ですからめまいは変わらないわけです。

 これに対して、頭眩は、運動時の体内感覚を統合する小脳の異常によるものですから、目をあけて体内感覚のブレに外からの感覚像が加わりますと、像が補正・修正されて安定するので、めまいが治まっていく傾向を示すのです。